公益社団法人京都保健衛生協会

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トコジラミ
ここ数年,ヨーロッパ,アメリカで大流行しています。特にニューヨークでは,住宅,ホテル,映画館,事務所など色々な場所で大発生しているとインターネットなどで報じられています。増えた理由はいくつかあるでしょうが,その理由の一つにトコジラミに比較的効果的といわれる殺虫剤が室内で散布できなくなったためだといわれています。

また,日本でも問題になりつつあります。戦後,日本でもごく普通の害虫でした。ところが住環境が整備されたことや比較的効果的な殺虫剤を使用することによって一時は日本から姿が見えなくなったように思われていましたが,最近,日本でもホテルや旅館などで増えてきているといわれていますし,実際にホテルでトコジラミを確認したことも幾つかあります。また,個人の家での発生例も確認しています。今後も要注意です。
特徴
ナンキンムシともいいます。シラミの名前がつきますが,アタマジラミやケジラミとは全く異なる種類で,どちらかというとセミやカメムシの仲間です。この仲間は,口が針のようになっていて草や樹木の樹液を吸うのに適しています。トコジラミは,こうしたとがった口を利用して,動物を吸血するようになりました。

成虫の大きさは7mm程度

針のような口器

卵から孵化した直後の幼虫
被害
夜間の就寝中に襲われます。多くは,露出している皮膚の部分を吸血します。吸血されても激しくかゆみを感じる方からほとんどかゆみを感じない人まで様々です。刺し口は,同じ所の付近に幾つか認められることがあります。これは1匹のトコジラミが同じ所の付近を数回にわたって吸血をすることがあるためです。1箇所の場合も多くあります。吸血した血液で腹を赤くふくらませます。

人はもちろんペットの犬や猫,さらには小鳥までを吸血します。幼虫,成虫とも吸血します。


民家で大発生していた事例
柱が黒く見えているのはトコジラミの糞

ホテルで発生していた事例
ベッドに付いた糞
極めて狭い隙間にもぐりこんでいるトコジラミを見つけ出すのは大変です。それに対してトコジラミの糞は,見つけやいのでトコジラミ生息を確認する一つの方法ですし,糞のあるところの近くに幼虫や成虫が潜んでいることが多いので,幼虫や成虫を見つけ出すためにも利用できます。


対策
まず,生息場所を確認する必要があります。
昼間は,壁,柱,家具,カーテンなどのわずかな透き間に潜んでいます。こうした透き間を調べると,潜んでいる幼虫や成虫を見つけられることもあります。また,吸血後に糞(ふん)をすることがあります。壁や柱にその糞を確認することができます。また,多数生息しているときは,トコジラミが分泌する独特の不快な臭いがします。
部屋の中の比較的高いところを好むようです。

トコジラミは夜行性です。住民が寝静まった頃から活動します。夜間に調べると見つけやすいです。
部屋を乱雑にしておくと,トコジラミの好むすきまが多くなります。部屋を整理整頓し,トコジラミが住みにくい環境をつくる必要があります。また,整理整頓することにより,駆除作業も効率的に行えます。
移動時に注意が必要です。
トコジラミは,1年近く生きるといわれています。また,吸血しなくても1箇月程度は生きています。色々な荷物の透き間などに潜んで,荷物の移動とともに広がります。注意が必要です。

殺虫剤
駆除は,どうしても殺虫剤に頼らざるをえません。くん煙剤(殺虫成分が煙やガスになって出てくるもの)ではトコジラミが潜んでいる透き間まで殺虫剤が行きわたりにくく,著しい効果が期待できません。また,ピレスロイド系のエアゾール式の殺虫剤も使用したことがありますが,著しい効果はありませんでした。
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しかし,トコジラミにはフェニトロチオン(商品名スミチオン)が比較的効果があります。フェニトロチオンは,欧米では室内に散布するのに制限がありますが,日本では注意を払ったうえで使用できます。潜んでいる場所を見つけ,その場所にフェニトロチオン乳剤を水で薄めて,壁や柱の透き間などに注ぎ込むように散布します。ただ,フェニトロチオンは,個人の方では入手しにくいかもしれませんし,散布に当たっても専門知識が必要です。経験のある当協会に御依頼いいただくのも一つの方法です。

くれぐれも個人で殺虫剤を使用するに当たっては,殺虫剤の説明書きをよく読んで用法用量を守ってください。