公益社団法人京都保健衛生協会
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ミナミツメダニ
昭和50年代に原因不明の虫刺されが多発しました。やがてその犯人が分かりました。ミナミツメダニでした。輸入された畳のわらに混じって入ってきたようです。そのため,新しい畳の部屋で多くの被害が起こりました。
特徴
特殊な検査
ツメダニは,室内のホコリから見つけることができます。ツメダニの体長は0.5mmほどで,肉眼ではほとんど見えません。そのため,特別な検査方法が必要です。京都保健衛生協会では,飽和食塩水法で検査しています。
被害
多くの場合,刺された直後に痒くなりません。数時間,あるいは数日後に痒くなってきます。そのためにどこで被害に遇っているのかが分りにくいのが特徴です。また,痒みが長く続くのが特徴です。数日,場合によっては,数週間続くこともあります。被害の時期は,梅雨の後半から,秋口まで気温の高いときに多いようです。ただ,室内の温度が高ければ,涼しい時期にも起こります。
対策
ミナミツメダニは,他のダニを捕らえて,その体液を吸って生きています。ミナミツメダニの大きな爪は,他のダニを捕えるための重要な武器です。どの家庭にも多少のツメダニ類は,生息していますが,普通,人への被害を起こすことは,あまりありません。ところが餌になるダニが異常に増え,それにともなってツメダニが増えると,人への被害が生じるようです。今までの被害の例は,ほとんどが畳から発生したミナミツメダニによるものです。特に,1〜3年の新しい畳が多いようです。また,マンションのような気密性の高い建物内部の畳は注意が必要です。
殺虫剤が効きにくいようです。
くん煙剤(殺虫成分が煙やガスになって出てくるもの)は,ツメダニが生息している畳の内部まで殺虫剤成分が行きわたりにくいので著しい効果を期待できません。また,畳の中に針を剌して殺虫剤を染み込ませる方法も,十分な効果を期待できません。このようにツメダニに対して殺虫剤の効果が著しくないのは,ツメダニが殺虫剤に強いためです。殺虫剤に頼っての駆除は,無理があります。
大掃除
初夏から盛夏にかけて大掃除を行い,畳を干すと,畳内部の温度が高くなり,その熱でツメダニ類を駆除できることがあります。しかし,ツメダニ類のなかには,熱を逃れて,熱の影響をさけるために畳内部を移動するものもいて,被害を急激に少なくするまでにはいかない場合も多いようです。しかし,大掃除は,こうした直接的な駆除効果よりも畳が乾燥し,さらにツメダニ類の餌になる他のダニの餌のホコリを取り除くことで,間接的にツメダニも発生を抑える効果があります。しかし,大掃除の習慣がなくなった今日では無理なことかもしれません。
被害を軽減する方法があります。今までの被害例では,被害は,畳の部屋で寝起きしている場合に多く起こっています。これは畳の表面で活動しているツメダニ類に人の素肌が接触することによって刺される被害が起こるためです。畳の上に直接寝転んだりするのは避けます。また,できれば,畳に直接布団を敷いて寝るのではなく,ベッドなどで畳から離れて寝るのも被害を少なくする方法の一つです。また,床が板やビニール張りの部屋を寝室にすることにより,被害が軽減できる可能性もあります。
 まずは,こうした方法を行ってみるとよいでしょう。
畳に熱処理する方法があります。
電子レンジと同じ原理で,畳に高周波をあてて畳内部のダニを焼き殺します。非常に効果的ですが,畳屋さんに処理を依頼しなければなりません。電話帳の「畳」の項で調べると高周波処理を行っている畳屋さんがいくつか掲載されています。また,熱風によって畳内部の温度を上げて,ツメダニを駆除する方法もあります。効果的ですが,高周波処理と同じように畳屋さんに処理を依頼しなくてはなりません。直接加熱するため新しい畳は,風合いが落ちるとも言われています。 
日常の注意
 日ごろから部屋の乾燥,通風を心掛け,餌になるダニ類の増殖を抑えます。特に,マンションは気密性が高ために,湿度が高くなり注意が必要です。具体的には,常に窓を開ける,室内に洗濯物を干さない,室内で頻繁に煮炊きをしないなどの注意が必要です。